訪問美容とは?誰が頼めるのか|名古屋市の決まりと、現場で見てきたこと

やわらかな日差しが入る自宅のリビングに、背もたれのある木の椅子と、たたんだケープ・コームを置いたイメージ

「訪問美容って、うちの親でも頼めるのかな」

調べはじめると、意外とはっきりした答えが見つからないと思います。

介護認定が必要なのか。車椅子じゃないとだめなのか。歩ける人は対象外なのか。

この記事では、名古屋市で訪問美容をしている僕が、まず決まりとして誰が対象になるのかを整理します。そのあとで、現場で見てきたことを少しだけ書かせてください。

訪問美容は、美容室へ行くことが難しい方のためのサービスです

美容師は、原則として美容室(美容所)の中でしか仕事ができません。美容師法の第7条でそう決められています。

そのうえで、政令(美容師法施行令の第4条)で決められた「特別な事情」がある場合に限って、美容室の外で髪を切ることが認められています。訪問美容は、この例外の上に成り立っています。

つまり、「家に来てもらえたら楽だから」という理由だけでは頼めないサービスです。

ここは、最初にはっきりお伝えしておきたいところです。

名古屋市で、訪問美容の対象になる方

名古屋市の案内(2026年6月4日更新)では、美容室以外で美容ができるのは次の場合に限られています。

対象名古屋市の案内の内容(要約)
病気やけが、介護が必要な状態などで、美容室に来ることが難しい方病気のほか、骨折、認知症、障害、寝たきりなどの状態で、その程度や生活環境から見て、美容室に来ることが難しいと認められる方
家で常に、育児や介護をしていて家を離れられない方家族である乳幼児の育児、または重度の要介護状態の家族の介護を常にしていて、ほかの家族や行政サービスの援助も難しく、家族を残して美容室へ行くと家族の安全が守れない方
社会福祉施設に入所している方施設で生活している方。デイサービスなどの通所やショートステイの利用だけでは該当しないが、病気などで美容室に来ることが難しい方は対象
そのほか婚礼などの儀式の直前、港に停泊中の船の乗組員など

詳しい条件は、名古屋市の公式ページに書かれています。

「要介護認定がないと頼めない」わけではありません

案内の中に、「要介護認定を受けていること」という条件は書かれていません。

決め手になるのは認定の有無ではなく、その方の状態と生活環境から見て、美容室へ行くことが難しいかどうかです。

逆に言えば、認定がなくても誰でも頼める、というわけでもありません。グリシーヌでも、この決まりに沿ってお伺いしています。

現場では、こんな方も訪問美容を利用されています

表だけだと少しイメージしにくいので、僕がこれまで訪問美容の現場で見てきた例を書いてみます。

これまで息子さんや娘さんが、美容室まで車で連れて行っていた方。

足腰が弱ってきて、車の乗り降りや、美容室の椅子まで移動するのが本人にとってもご家族にとってもしんどくなってきた。そういう段階で、訪問美容を頼まれる方は実際にいらっしゃいます。

車椅子を使っていない方でも、会話がしっかりできる方でも、それだけで対象外になるわけではありません。「歩けるかどうか」ではなく、美容室へ通うことが難しいかどうか、で考えます。

ご家族をずっと介護していて、家を空けられない方。

目を離すと危ない。一人にしておくと、どこかへ行ってしまうかもしれない。そういうご家族を家で見ている方は、ご自身が美容室へ行く時間を作れません。

ここは、正直に言うとケースごとに判断が分かれるところです。「必ずお伺いできます」とはお約束できません。それでも、条件に当てはまることもあるので、まずはご相談いただけたらと思っています。

美容室へ行けなくなった後、髪はどうなっているのか

ここからは、訪問美容の現場で見てきたことです。

施設へ伺ったときに一番多いのは、髪を切らないまま、伸ばしっぱなしになっている方です。

1年ぶりに髪を切る、という方も珍しくありません。

ご家族が切っているケースもあるにはあります。ただ、僕が見てきた範囲では、男性がほとんどです。バリカンで、そのまま短く刈ってしまう。

それも一つの方法だと思います。

でも、美容室に通っていた頃に当たり前にしてもらっていたことが、行けなくなった途端に「ただ切るだけ」になってしまう。そこに、なんとも言えない引っかかりがありました。

僕が「来られなくなる人がいる」と初めて意識したとき

サロンで長く担当していたお客様が、終わりの活動、終活をしていると話してくれたことがあります。

「もう、いつ来られなくなるか分からないから」

そう言われたとき、正直、衝撃を受けました。

17年間、美容室に来てくださる方の髪を切ってきたのに、来られなくなった後のことを、ほとんど考えたことがなかったんです。

このとき初めて、「来られなくなる」ということが自分の仕事の話になりました。訪問美容を始めたきっかけも、ここにあります。

短髪の襟足をきれいに整えた高齢男性の後ろ姿と、その肩にそっと添えられた家族の手
髪を整えたあとの、家族との穏やかなひとときを表すイメージ(AI生成)

髪を切ったあと、変わったのはご家族の表情でした

親戚のおじさんの髪を、家で切ったことがあります。

おじさんは介護が必要になり、デイサービスにもまだ通えていませんでした。おばさんが一人で、家でずっと見ていました。一人にしておくのは危ない状態だったので、おばさんもほとんど家から出られなかったと思います。

ずっと元気だった人が元気をなくしていく。自分も介護で疲れていく。おばさんの気持ちも、たぶん落ちていたんだと思います。

おじさんの髪をさっぱり切って、ちょっとかっこよくなった姿を見たとき。

おばさんの表情が、ぱっと明るくなりました。

そのあと、おばさんの髪も少し切りました。すると今度は、あまり言葉を話せなくなっていたおじさんの表情が、明るくなったように見えたんです。

うまく言葉にできないんですが、ただ髪を切っただけではない何かがあった気がしています。

家に人を呼ぶことに、迷っているご家族へ

訪問美容は、家に知らない人を上げることでもあります。気が引ける方もいると思います。

それに、正直に言うと、床屋さんへ連れて行ったり、デイサービスで切ってもらったりするほうが、安く済むことが多いです。

僕自身も以前は、「わざわざお金を払って家に呼ぶのってどうなんだろう」と思っていました。

それでも、今は少し考えが変わっています。

美容室に行くと、多くの方が美容師と話をします。他愛もない話だったり、ちょっとした愚痴だったり。もちろん、ずっと黙っている方もいらっしゃいます。

髪を切って気分が良くなる、というのは確かにあります。でもそれと同じくらい、誰かと話して、心の中を少し外に出せたすっきり感もあるんじゃないかと思っています。

家で介護をしていると、それがなかなかできない。おばさんを見ていて、そう感じました。

第三者が家に来ることが、ご本人にとってもご家族にとっても、ちょっとした刺激になる。訪問美容には、そういう面もあるのかもしれません。

まとめ

  • 訪問美容は、美容室へ行くことが難しい方のためのサービスで、誰でも頼めるものではありません
  • 名古屋市では、病気・けが・介護が必要な状態などで美容室へ来ることが難しい方、家族の育児や介護で家を離れられない方、施設に入所している方などが対象です
  • 要介護認定の有無ではなく、その方の状態と生活環境で考えます
  • 当てはまるか分からない場合は、ご相談ください。決まりに沿って、お伺いできるかを一緒に確認します

料金については、訪問美容の料金はいくら?にまとめています。

美容室へ行けなくなっても、美容を諦めなくていい。僕はそう思っています。

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